コラム

【第7回】貧乏自慢

先日、近所を歩いていたら、人気のイタリア料理店が開店何周年かの記念として、開店当時の回想記をお店の前に掲示していました。
 
それによると、最初の一年間はオーナーの年収が、何と二十四万円しかなかったそうです。で、それを見て一言、
 「勝った(笑)」
と。なぜなら、サラリーマンを辞めてフリーになったとき、最初の年の年収は確か八万円しかありませんでした。月収じゃなく、年収なんです。つまり、貧乏というならこっちの方が凄いぞ、というネガティブ自慢の気持ちがムクムクと湧きあがったんですね(笑)

もちろんサラリーマン時代の蓄えがあったし、奥さんも子供もいなかったからこそ出来た荒業だったんですが、さすがに質素な生活をしていました。

たとえば、夜に食べるものといえば、だいたい「三色丼」。作り方をご紹介しますと――

1、 まず丼にご飯を盛ります。
2、 そこに納豆をのせます。
3、 芽カブ昆布ものせます。
4、 温泉卵ものせます。
5、 食べます。

で、これだけだと野菜が少ないので、青汁を飲んでいました。ちなみに、病気になると大変なので栄養バランスにはかなり気を使い、『食品成分栄養表』は熟読しました。特に一品でビタミンを大量にとれる野菜――紫蘇、赤ピーマン、モロヘイヤ等は安いときになるべく買い込んで、食べていましたね。

それと、着るものに関しては、近所のイトーヨーカドーのバーゲン品を買うようにしていたんですが、なんとある時、そこに「ユニクロ」が出来たんです。出店すると行列が必ずできて、警備員の人がついていた時代でしたね……

見ると安かったんで、買ってシャツとか着ていました。すると、知り合いの出版社の人から、
「あら、あなた着るもののセンスよくなったんじゃない」
と言われてしまったんです。ユニクロに変えたらセンスよくなったって、今まで何だったんだろう、と流石にその時はがっくりした覚えがあります(笑)

まあ、こういった貧乏な時期も、ある意味、力技で楽しみながら少しずつ仕事を増やしていったんですが、思うに、この時期耐えられたのは、会社員時代にもうちょっと激しい貧乏を経験したからだったりもするんです。

それは新入社員のとき。一人暮らしを始めて貯金を使い果たしたけれど、初任給で何とか食べられると計算していたんですが、何と〆日の関係で初任給は三分の二しか出ない。こ、これじゃあ食費が出ない、どうしよう……と思い悩んでとった策が以下。

1、 炊飯器が買えない。仕方がないので、腹もちが良いお餅でしのぐ。
2、 野菜も食べた方がよいが、高いのは買えない。なので、ひたすらモヤシいため。
3、 肉も食べたいが、そんな贅沢品手が出ない。なので、代用品として納豆。

ということで、夜はひたすらこの三つ。昼はなんともラッキーなことに、「サンキューセット」とか「サンパチセット」といったハンバーガーセットの安売り競争をしていたので、ひたすらそれを食べる。ということで次の給料が入るまで何とか凌いだんです。

ところが、ここに思わぬ悲劇が。ある日、モヤシを炒めて食べようと思ったら、変な匂いがする。どうしようか迷った末、火を通せば大丈夫と無理矢理炒めて食べたら、見事あたって会社を休んだんです。で、理由を聞かれて、純心だった私(笑)は、
「腐ったモヤシ食べてあたっちゃったみたいです」
と答えてしまい……

それ以後、体調不良で休むたびに、「お前、また腐ったモヤシ喰ったのか」と言われましたですよ、ハイ。ああ、貧乏が憎い……

でも、貧乏は経験してよかったという点が幾つかあります。
1、 好き嫌いがなくなる。そんなこと言ってたらお腹がいっぱいになりません。
2、 ご飯を感謝して頂ける。うまいマズイなど、言いません。
3、 栄養に詳しくなる。自分の健康にも、子供の食育にもそれなりに役立っています。

そういえば、会社員時代の先輩からは、
「君って、安物買いの銭失わないだよね」
と言われたこともあります。理由を聞いたら、
「普通、安物はすぐにダメになるので金がかかるけど、君の場合、無理矢理使い続けて元をとるので、銭失わないんだよね」
だ、そうです。誉められてたのかなあ、いや、呆れられていたんだろうなあ(笑)